今回は視聴者の方からリクエストをいただいた「守備指標」について解説していきます。
守備の指標には「DRS」「UZR」「OAA」など複数ありますが、実際どれを見ればよいのか迷うことも多いのではないでしょうか。
結論としては、以下のように使い分けるのがおすすめです。
- 外野手の場合:主に「OAA」守備範囲がより正確に評価される。
- 内野手の場合:「DRS」と「OAA」の両方を参考に。
- UZRはあくまで参考程度にとどめておく。
それでは、これら3つの指標がそれぞれ何を意味しているのか、基本的な特徴と違いについて順番に解説していきます。
▼動画で観たい方はこちら

守備指標とは?
バッターの成績は打率やホームラン数などで直感的に把握しやすいですが、守備の良し悪しを数字で判断するのは難しいものです。
そこで登場するのが「守備指標」と呼ばれる統計データです。選手がどれだけアウトを取ったか、どれほど守備でチームに貢献したかを、定量的に可視化するためのものです。
ただし、指標にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴が異なります。
今回は、メジャーリーグで特によく使われる3つの指標「DRS」「UZR」「OAA」を取り上げて紹介します。
DRSとは?
「DRS」は「Defensive Runs Saved」の略で、日本語では「守備で防いだ失点」を意味します。
この指標は、選手がどれだけ失点を防いだかを点数で表し、たとえばDRS+10なら「平均的な選手よりも10点分の失点を防いだ」ということを意味します。
DRSの算出方法は、後述するUZRと基本構造が似ており、「打球の種類・方向・速度」に対して、「何%の確率で処理できるか」という期待値に基づいて評価が行われます。
たとえば、センターに飛んできたフライボールが「60%の確率で捕球できる」とされていた場合、それを捕球すれば+0.4ポイントが加算され、捕球できなければ−0.6ポイントが減点されます。
このようなプレーごとの評価を積み上げて、シーズンごとのDRSが算出されます。
DRSは、捕手や投手を含むすべての守備選手に適用されるのが特徴です。
守備範囲だけでなく、送球の精度、失策、併殺への貢献、盗塁阻止なども加味され、守備力を“総合的に”評価できるバランスの取れた指標といえるでしょう。
このDRSは2002年から記録されており、シーズン単年での歴代最高は2017年のアンデルトン・シモンズによる+41。
外野手としては、ケビン・キアマイアーの+38が2位となっています。ポジションは違えど、いずれも広い守備範囲と強肩を兼ね備えた名手です。
UZRとは?
「UZR」は「Ultimate Zone Rating」の略で、日本のプロ野球でも採用されているため、DRSより馴染みがあるという方もいるかもしれません。
考え方の基本はDRSと同様で、打球が飛んできたゾーンごとに「平均的な守備者ならどれだけアウトにできたか」という確率をもとに、実際のプレーと照らし合わせて守備力を評価していきます。
UZRは、以下のように複数の要素を組み合わせて構成されています。
- Range Runs(RngR):守備範囲の広さ。打球の難易度も評価対象に。
- Error Runs(ErrR):エラーの少なさ。失策が失点に与える影響。
- Double-Plays Runs(DPR):併殺プレーへの貢献度(主に内野手)。
- Arm Runs(ARM):送球能力の評価(主に外野手)。進塁阻止なども加味。
ただし、UZRは捕手には適用されません。内野手・外野手の守備評価用である点には注意が必要です。
また、もう一つ重要なのが、UZRはすでにFanGraphsのWAR計算には使われていないという点です。
以前はFanGraphs版WAR(fWAR)の守備評価に採用されていましたが、現在ではStatcastによる「OAA」や「Fielding Run Value」が主流となっています。
UZR自体は2025年シーズンまで計算は続けられますが、あくまで「旧世代の基準」として参考程度にとどめるのがよいでしょう。
OAAとは?
「OAA」は「Outs Above Average」の略で、Statcastによって計測された最新の守備指標です。
打球の初速・角度・方向などをリアルタイムに分析し、どれだけ“平均以上のアウト”を取ったかを数値で示します。
たとえば、2023年にレッズのエリー・デラクルーズはOAA+15で全選手の中で7位タイという好成績を記録しました。
しかし、同年のDRSは−2となっており、一見すると矛盾しているように見えます。
この理由は、OAAが「捕るまでの守備範囲」を評価する指標で、送球ミスやエラーは含まれていないからです。
実際、デラクルーズはエラー数29個、送球エラー13個と、ともにメジャー最多でした。
このように、守備範囲が広くても送球ミスが多ければ、OAAは高くてもDRSが低いというケースがあります。
逆に、OAAがマイナスでも、送球や処理が確実でDRSがプラスという選手も存在します。
内野手のように「捕った後の送球」が重要なポジションでは、OAAだけでなく、DRSなど他の指標とあわせて評価することが望ましいです。
一方で、外野手の場合は守備範囲の比重が大きくなるため、OAAの数値がそのまま守備力を反映しやすいといえるでしょう。
なお、OAAは捕手には適用されていません。
捕手の守備はフレーミング・盗塁阻止・ブロッキングといった特殊なプレーが中心となるため、Statcastが提供するキャッチャー専用の指標で評価されています。
まとめ
今回は、メジャーリーグでよく使われる守備指標「DRS・UZR・OAA」について解説しました。
それぞれの特徴を踏まえると、現時点でのおすすめは以下のとおりです。
- 外野手の場合:守備範囲を正確に測れる「OAA」を重視
- 内野手の場合:「OAA」と「DRS」の両方をチェックしてバランスよく判断
- UZRは、かつて主流でしたが、現在はあくまで参考程度に見るのが適切
守備指標はそれぞれ得意な評価領域があるため、複数の指標を組み合わせて見ることで、より正確な選手評価が可能になります。
今後の試合観戦や選手分析の参考になれば嬉しいです。
コメント